八方園 教室の移転もあり、時間が取れない中、桜見を楽しみました。場所は八芳園。庭だけ入れることに気がついて、ここのところ毎年楽しませていただいております。
 見事な日本庭園。江戸時代初期、徳川家康の側臣の一人である、大久保彦左衛門の下屋敷だそうです。

 ここへ来ると、泉鏡花の「外科室」を
思い出します。伯爵夫人が心臓の手術をするにあたり、麻酔をすると心に秘めた思いをうわごとでしゃべってしまうから、麻酔をしないで手術をするという話。言ってはいけない話とは、執刀医に恋をしていること。執刀医とは9年前に植物園(おそらく小石川植物園)の桜の下ですれ違っただけの一目ぼれの相手。執刀医も伯爵夫人に一目ぼれで相思相愛。しゃべったこともないのに、お互いの愛を確信し、夫人が麻酔無しの手術で亡くなったあと、その医者も自殺する。究極の恋愛話。
そんな恋があるのかと、衝撃を受けながら小説を読んだ。桜を見るたびに、そんな恋があるのかと毎年思うのです。